社団法人 全国学習塾協会

学習塾における子どもの安全に関する取り組み

1.背景及び具体的対策

平成17年12月10日、京都府宇治市の学習塾において女子児童がアルバイト講師に刺殺された事件が起きたことを受けて、社団法人全国学習塾協会(以下「協会」)は、事件の翌日に一般消費者ならびに学習塾事業者に対する緊急声明[PDF]を決議するとともに、即時に当協会のホームページに声明文を公表しました。

平成15年1月から10月までに15歳以下の子どもを狙った事件が126件発生したことを警察庁が発表。また、同年10月にそろばん塾からの帰宅途中に8歳の女子児童が不審者に拉致される事件が発生するなど、学習塾業界でも通塾時の子どもの安全に懸念を感じ始めていました。

協会では、平成16年3月に初めて、開始・終了時間の保護者送迎等の促進、防犯ブザー、ホイッスル等防犯具の配付・貸与及び携行の周知徹底、不審者情報・事件情報の収集・提供等を主な内容とする「学習塾における防犯対策6項目」を定め、学習塾事業者に対して取り組みの推進を呼びかけました。

平成17年の後半になって、広島小1女児殺害事件、栃木小1女児殺害事件などが相次いで発生し、協会では「学習塾における防犯対策6項目」のさらなる拡充と周知徹底を図ろうとしていた矢先に12月10日の冒頭の不幸な事件が発生しました。

講師が起こしたこの事件の衝撃は大きく、協会が学習塾事業者団体としてまず危機感を持ったことは「教職員の倫理観」でした。緊急声明文にある「子どもたちのいちばんそばにいて、子どもたちから最も信頼されるべき立場にいる学習塾で、このような事件が起きましたことは、私どもにとっても大きな衝撃であり、この事実を重く受け止めています。」、「今後は、新たに学習塾事業者の従業者管理や倫理教育に関する指針を定めて周知徹底を図る所存」という言葉がその危機感を物語っています。当該指針が学習塾の倫理綱領(「学習塾における倫理と行動の基準」に改称)。

緊急声明文公表の翌日12月12日、経済産業省は協会に対して、「学習塾における児童生徒の安全対策について」という通達を行いました。すなわち、「学習塾における安全を重視した学習環境の整備や教職員の資質の向上、通塾時における安全の確保等について早急に検討し、同基準を踏まえた詳細なガイドラインを新たに定めるとともに、貴協会傘下会員に対する指導を行う等、学習塾における児童生徒の安全を確保するための万全の方策を早急に講じ」ることです。この文書によって、学習塾に通う子どもの安全確保の方向性が明確に打ち出されました。

①通塾時における安全の確保
②学習塾教職員の資質の向上
③学習塾における安全を重視した学習環境の整備

この3点について、学習塾事業者等に対して、その事業理念や事業規模あるいはその事業形態にかかわらず、事業者が遵守すべき共通の基本的方針を「学習塾に通う子どもの安全確保ガイドライン」として提示するということです。

政府は平成17年12月20日に犯罪対策閣僚会議(第6回)を開き、学習塾に通う子どもの安全対策の具体化を図るため、内閣府、警察庁、文部科学省、経済産業省からなる四省庁局長会議を設置を決めました。さらに同月27日の四省庁局長会議では、協会において学習塾に通う子どもの安全対策推進委員会を設置し、以下の事項に取り組むこと等を決定しました。

・専門家、学習塾関係者等を委員として前掲のガイドラインを策定する(→策定済)
・ガイドラインの作成にあたり約2千塾を対象に学習塾における安全確保の実態調査を行う(調査結果[PDF]
・安全対策の普及啓蒙のためのセミナーを開催する(→終了)

学習塾に通う子どもの安全対策推進委員会の構成は、以下の通り。(平成18年3月当時)

◎は委員長〔順不同・敬称略〕

甘利 康文 セコム株式会社IS研究所
榎本 勝彦 栄光ゼミナール塾長室室長
高木 幹夫 日能研代表取締役
渡邉 正樹 東京学芸大学教授
森 貞孝 全国学習塾協同組合理事長
石井 正純 協会会長
◎伊藤 政倫 協会副会長
稲葉 秀雄 協会専務理事
関 志郎 協会常任理事

2.学習塾に通う子どもの安全確保ガイドラインの策定と普及

委員会の協議を経て、学習塾に通う子どもの安全確保ガイドラインは平成18年3月16日に前掲の四省庁局長会議に提出され承認を得て、公表されました。

ガイドラインは、Ⅰ.通塾時における安全の確保、Ⅱ.学習塾教職員の資質の向上、Ⅲ.学習塾における安全を重視した学習環境の整備の三本柱からなり、「通塾時における安全の確保」においては、通塾方法等の把握と安全性の確認、不審者情報の収集・提供、保護者または学習塾教職員による送迎の実施、防犯機器の活用などについての具体的方針を示しています。

とりわけ、通塾方法等の把握と安全性の確認については、「危機脱出」より「危機回避」の重要性から、子どもの通塾方法・経路に関して、安全性に問題等はないかリスクを分析するなど、可能な範囲でリスクを回避するための方策を講じることが盛り込まれるとともに、リスク回避及び防犯・交通安全の規準として、「入りやすい・見えにくい」場所が採用され、次のことが明記されました。

・危険・要注意箇所
危険・要注意箇所とは、犯罪が起こりやすい場所であり、その特徴としてだれもが「入りやすい場所」と周りから「見えにくい場所」などが挙げられ、例として次のような場所がある。

ガードレールがない歩道、不特定の人が容易に入りやすい公園・空き地・デパート、人通りが少ない道路、高い塀や樹木が生い茂るなど周りから見えにくい道路、藪・駐車場・倉庫・空き家など人が身を隠しやすい場所

「学習塾教職員の資質の向上」については、学習塾教職員の採用方法の適正化、学習塾教職員の教育・研修、子ども及び保護者に対する行動基準などについての具体的方針を示しています。

京都府宇治市の事件の加害者であるアルバイト講師の採用にあたって、問題となる履歴に関して十分に把握できなかった点や人格面の重視などから「代表者は、学習塾教職員の採用時において、本ガイドラインを交付して、これを理解・実践できるかを確認し、誓約書を提出させる。また、雇用の形態・契約内容に関わらず、代表者自らが応募者本人の履歴及び現状確認を行うとともに、面接等を慎重に実施するとともに、その方法についても工夫し、応募者の人格的本質を発見するよう努める。」という表現で課題の改善となる方針を示しました。

「学習塾における安全を重視した学習環境の整備」については、学習塾教職員の業務及び行動の監督・確認、学習塾内の施設・設備の安全確保、緊急時における組織・連絡体制等、不審者侵入時等の対応などについての具体的方針を示しています。

協会は経済産業省と共催で、平成18年3月に京都と東京おいて「学習塾に通う子どもの安全対策セミナー」(後援:内閣府、警察庁、文部科学省)を開催し、学習塾に通う子どもの安全確保ガイドラインをはじめ学習塾に通う子どもの安全対策に関して普及・啓蒙に努めました。

また、協会ホームページに「学習塾に通う子どもの安全確保ガイドライン」(経済産業省ホームページリンク)を公表するとともに、会員塾事業者に送付し、かつ、4月から8月にわたって毎月月報・協会ニュースにおいて学習塾に通う子どもの安全に関する普及啓蒙記事を掲載しました。

政府は、平成18年6月20日に犯罪対策閣僚会議(第7回)を開き、学習塾等に通う子どもの安全確保の推進等を盛り込んだ子ども安全・安心加速化プランを決定しました。これを受けて経済産業省が協会に委託しました事業―「学習塾に通う子どもの安全確保ガイドライン」について、より具体的な留意事項等の紹介を含め周知・普及し、学習塾事業者等が子どもの安全確保の実行に取り組んでいけるような自主的指針づくり等を促進することを目的としたセミナー事業―「学習塾等に通う子どもの安全対策セミナー」(共催:経済産業省 後援:内閣府、警察庁、文部科学省)を、新たに作成した学習塾に通う子どもの安全確保ガイドラインFAQ(よくある質問)を説明する等として全国7ヵ所で開催しました。

今後は、さらなるガイドラインの普及に努め、学習塾事業者のみならず、子どもを対象とした業に携わるあらゆる事業者及び事業団体においても、本ガイドラインを子どもの安全対策を構築する際の一助として活用していただきたいと願うものです。

「学習塾に通う子どもの安全確保ガイドライン」に沿った学習塾における子どもの安全対策について
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